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2)美杉会佐藤病院 放射線治療センター1)順天堂大学医学部放射線治療学講座(放射線腫瘍学・医学物理学)この抄録は,順天堂醫事雑誌68巻4号,p332-338,2022掲載の『My 42-year Experience in Radiation Oncology』の和文抄録です.順天堂醫事雑誌2022. 68(4), 452抄 録1981年からの放射線治療の歴史と順天堂大学放射線治療学講座について述べる.1981年当時,治療計画はX線透視装置により骨などのランドマークを用いて行っていた.治療も低エネルギー光子を用い,照射範囲のトリミングも鉛ブロックを用いた簡単なものであった.このため,病変部に必要十分な線量を照射できないことがしばしばであった.80年代後半から2000年にかけて放射線治療は革命的に進歩した.コンピュータ技術,精密機械技術,画像診断技術の飛躍的進歩に伴い,コンピュータ制御可能な多分割絞りを装備した超高エネルギーリニアックとCT画像などを用いた3次元治療計画装置が導入された.この成果として,治療標的に一致した線量分布で放射線を照射することができる強度変調放射線治療や,小さな病変に大線量を集中できる定位照射などが行われるようになった.また,陽子線や炭素線を用いた治療も普及しだした.2000年以降は,上述の技術はさらに発展し一般診療として施行できるようになった.また,治療毎に画像を撮影し,病変の位置や他臓器との関連を見ながら治療する画像誘導放射線治療,さらに照射中の動きを把握できるシステムも開発され,正確に標的に照射可能となっている.また,画像診断の進歩により代謝画像を用いた治療計画も導入されている.放射線治療は,現在,がんの根治治療や緩和治療として標準治療となっている.2000年当時,放射線医学講座内の小さなグループだった放射線治療は,現在,法人全体で放射線治療医師11名,医学物理士5名,治療装置7台+RALS 1台,順天堂医院での治療症例数約1000例となり,最先端の治療を提供できるようになった.代表的な治療成績は,症例数の多い前立腺癌で低,中,高リスクの7年PSA非再発率はそれぞれ100%,92.0%,93.2%,乳房温存療法での10年乳房内非再発率95.3~95.7%,子宮頸癌5年全生存はI,II,III,IVA期100,84,78,40%である.研究面は長らく低迷していたが,21年には英文論文数14編を達成した.約40年間で放射線治療は革命的な発展をした.これからも,装置の進歩に伴い長足の発展が期待できる.放射線治療学講座は教育,研究,診療面で講座としてようやく形が整ってきた.キーワード: 放射線治療,放射線腫瘍学,画像誘導放射線治療,強度変調放射線治療452笹 井 啓 資1, 2)放射線治療の42年間の発展と放射線治療学講座

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