68-1
93/98

JUNTENDO MEDICAL JOURNAL世界の偉人ランキングで常に上位であるナイチンゲールだが、彼女は近代看護の創始者と認識されている。その理由は看護行為を科学的なアプローチにより定義し説明し、そして実践を行い、看護行為が患者の回復に大きく寄与することを証明し、更に病気の快復のみならず健康の維持と疾病予防に大きく寄与したからである。ナイチンゲールは90歳(当時にしては非常に長寿だが、ブルセラ病で37歳以降はベッドでの著作が活動の主であった)で亡くなるまで多大な著作・文献を残した。特に有名なのはクリミア戦争中の兵士の高死亡率の劇的な改善である。その原因が病院での感染症によるものであることを、統計学を駆使したダイヤグラム(ナイチンゲールが開発)を用いて上層部に提示した。その結果、政府は病院の建築構造の改築を行い、換気・排水・暖房は改善された。更に看護により清潔や栄養が保持され兵士の死亡率は大幅に低下し、ナイチンゲールは英国の英雄となった。ナイチンゲールがその当時(日本ではペリーによる黒船来航時)主張した物理的・精神的・社会的な環境改善が今の新型コロナウイルスへの予防や対応に見事に当てはまると、多くの識者が指摘しているのは納得のいくところである。日本の新型コロナウイルスに関する国別の論文数では2020年では14位であり、多いとは言えない。感染者数との相関は不明ということだが、少なくともこのパンデミックを乗り越えるためには、科学的に正確なエビデンスを示してくれる研究が更に望まれるだろう。しかし、臨床現場の経験や体験、そして患者の状態等の観察から、情報を収集し系統的に整理分析し研究論文として発表することは、最前線で立ち向かっている多くの医療保健福祉等の関係者にとっては容易ではない。新型コロナが私たちの生活に及ぼした影響は計り知れず、研究的な取り組みから検証するべきことは多々有ある。アフターコロナ後の私たちの健康や生活に寄与する科学的研究成果の発信の場として、順天堂醫事雑誌を活用して貰えることを期待している。編集委員相川眞範射場敏明大田康江大野直子落合匠金子和夫城山泰彦後藤政実小西清貴櫻井しのぶ髙橋和久谷川武田村好史藤尾祐子コロナ感染拡大が続き、今はとうてい望めませんが、海外旅行が趣味の友人が数年前に訪れたペルーの人形を持ってきてくれました。早速、教室のレッスンにモチーフとして使うことにしました。エキゾチックな顔立ちと民族衣装です。(宮道明子) 順天堂醫事雑誌の記事については既に明治8年の創刊号から電子化されており,J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)の電子ジャーナル公開システムにおいて閲覧することができます.順天堂医学会のホームページからもご覧いただけますので,ご活用頂ければ幸いです(https://www.juntendo.ac.jp/journal/).「順天堂醫事雑誌」では,医学界の最新知識を紹介するために,特集として総説を毎号に掲載しています.読者の皆様には,特集として相応しい企画等がございましたら,編集室宛にご提案下さいますようお願い申し上げます.イラスト作者より特集の企画募集Ⓒ The Juntendo Medical Society 2022 Tokyo Japan20220228 発行人 順天堂医学会発行責任者 長 岡   功第68巻 第1号(通刊936)令和4年(2022年)2月28日発行明治8年(1875年)創刊〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1 順天堂大学内順天堂医学会事務局:電話 03-5802-1586E-mail: j-igaku@juntendo.ac.jp編集・印刷 株式会社 広稜社〒113-0034 東京都文京区湯島2-31-25-4F電話 03-3868-3352 E-mail: jmj@koryo-co.com順天堂醫事雑誌編集室(一財)国際医学情報センター内電話 03-5361-7089 E-mail: jmj@imic.or.jp櫻井しのぶ医療看護学部・公衆衛生看護学講座91編集委員長 長 岡  功古川亮子町田修一松本顕三井田孝美田敏宏三宅幸子山口智史和氣秀文Michael AndreeffRobert S. BresalierYang KeJoel MossRobert F Whittier編集顧問加藤 俊介桑鶴 良平小林 弘幸長岡 正範初田 真知子平澤 恵理村上 晶(イラスト)宮道明子編集後記順天堂醫事雑誌

元のページ  ../index.html#93

このブックを見る