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この抄録は,順天堂醫事雑誌67巻5号,p445-449,2021掲載の『A Clinical Study Starting from an Encounter with a Patient』の和文抄録です.順天堂醫事雑誌2021. 67(5), 510抄 録A Clinical Study Starting from an Encounter with a Patient 大学院を卒業した後,順天堂医院の当直で一人の救急患者さんを診察しました.失神を主訴に来院され,胸痛はありませんでしたが急性心筋虚血を示唆するような心電図所見でした.まずはCCUに入院させ経過をみていたところ,夜中に突然,心室細動を発症して意識を消失しました.直流通電で洞調律に復帰しましたが,心電図の奇妙なST上昇は持続していました.心臓カテーテル検査を含め精査しましたが明らかな基礎心疾患はなく,特発性心室細動と診断,服薬で不整脈の再発なく経過しました.その3年後に新しい疾患概念であることがスペインのBrugada兄弟から報告され,私も遅れて症例報告をいたしましたが,最初の報告者の名前から「Brugada症候群」と呼ばれるようになりました.Brugada症候群の患者さんは日本人に多く,最初の報告が本邦(順天堂?)からなされなかったことは残念でしたが,その後,遺伝子に原因のあるイオン・チャネル病であることが報告され,同じ遺伝子(SCN5A)異常で他の不整脈(洞不全症候群)の原因にもなることが明らかとなり,新たな臨床研究に繋がりました.私が出会った最初のBrugada症候群の患者さんは32年経過した現在もご健在でお仕事をされています.キーワード: Brugada症候群,心室細動,洞不全症候群510順天堂大学医学部附属練馬病院 循環器内科住 吉 正 孝

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